• 亀井美夫
    かめい・よしお
    元全な道具仕掛けで夢を釣るのがモットーの熱血イシダイ 師。
    「俺の仕掛けに食いつくこ とができる大物だけが相手」という信念のもと64チタンを素材に様々な道具を開発。
    これまでにt釣ったイシダイ65cm以上39尾。
    自己記録は
    イシダイ71.5cm
    新世界荒磯釣研究会会長
    CAMEXM代表
遊びといえばイガミ釣り
「小さいころの遊びいうたらイガミ(ブダイ)釣り。
山から切りだした竹を竿にしてカニエサで釣るんですけど、子供の力やから竿がのされそうになる引きの強さが面白くて」と笑う亀井美夫は、和歌山県見老津の漁師の家に生まれた。
物心ついたときには釣りをしていた生来の釣りきちで、小学6年のときには学校のイガミ釣り大会で41cmを仕留め優勝。
クラスの気になる女の子に釣りで注目されたことで、ますます釣り好きに拍車がかかり、近所の渡船を手伝っては沖磯に上げてもらって大物を狙うようになった という。

「元々凝り性やから、大きい魚を想像してハリも6 号とか7号から11号や12号へと大きいのを結ぶようになって、それを見ていた親父に、「ハリ大きくしたら食わん、カツオのケンケン漁でも食いの悪いときはハリスよりハリを落とすんや」って笑われました。でもイシダイ釣りに小さいハリは使いません。最低16号、屋久島のクチジロなんかでは24号。
万全な道具でどんと構えて、俺の仕掛け食えるもんなら食ってこい! なんですね」。
4年越しの初イシダイは60cm
イシダイ釣りを始めたのは、大阪の新世界に移り近くにあった釣具店「つり徳」に出入りし始めた16歳のとき。磯の王者に憧れ、独学で釣行を重ねるもののイシダイ釣りは甘くない。まともなアタリすら見ることなく4年目を迎えていた。

「今でもはっきり覚えてます。昭和42年(1967年)6月14日、見老津の中崎で初めて釣った60cm、4.3kgのイシダイのことは。そのとき並んで竿を出してた人が先にイシダイ釣ったんですけど、初めてイシダ竿が舞い込むところ見て、あんなん自分にきたらどないしようって思うてたら、自分の竿が舞い込んで、そらもう必死でしたわ」。

イシダイ魂に火が付いた亀井は、さらなる大物を求めて本州最南端の潮岬に夢を追った。狙いは南紀屈指の名礁「コメツブ」。時には渡船が近付くことすらできない本流がごうごうと流れるコメツブをステージに数々のドラマを生み出した100号オモリの仕掛けをぶち込み、60cm前半は数知れず、30尾以上の65cmオーバーを仕留めてきた。そして忘れられない出来事がある。
もしや日本記録!?
「横山晃さんがコメツブで、当時の日本記録86.3cm、12kgを釣る(1979年8月10日)前 のことですわ。いつもの100号オモリでしか入らない、そこに入りさえすれば必ずといっていいほどイシダイが食ってくるポイントで61、62cmを釣ったあとでした。
ハッと竿先を押さえて、また押さえる。それから竿先がフワフワッとしたあと一気に走ったんですわ。
最初根掛かりしたように動かない。少し緩めてやると経験したことのないすごい締め込みで、石突きを磯のくぼみに当てて足で押さえてなんとかこらえて必死にリールを巻いてたら根に張り付かれて。
ちようど見回りにきた渡船に飛び乗り引っ張ったら出たんですが、またもや強烈な引き。竿を船縁に当ててリールを巻き続け、あと少しというところで竿が跳ね上がった、ハリが外れたんです。
今まで釣った魚全部返すから、この1尾をくれっ! て祈りましたよ。

その後、横山さんが日本記録を釣りましたから・・・、あんなクチジロだったのでは! 今でも忘れられません」。
それまでも、どこでも竿が出せるように1本脚のピトンを作ったり、道具にはこだわっていたが、この出来事があってから「完全な道具」を求め工夫と改良を重ねていくことになる。
左右の樹脂プレート以外、ネジの一本にいたるまですべてチタンで作ったパーツに組み替えたペンのセネター(スプールは最強のアルミ7075)、激流の中でセットした竿が絶対に回らないピトン、食い込み重視のしなやかさをもたせながら、ド級を浮かせるパワフルな竿など、その後キャメックスの製品となり市販されたものもあるが、日の目を見ることなく亀井の自宅に眠っている道具は数知れない。
「自分が納得して、これを持つ人は幸せやなって思うもんしか売らんから」それが道具にこだわり一切の妥協を許さない亀井の姿勢だ。
最強の64チタン
亀井は素材も徹底的にこだわる。6%のアルミと4%のバナジウムを含むチタン合金「64チタン」は、硬度、強度共に純チタンの2倍以上。航空機などに使われるものの、高価で加工が難しく加工費も高くつく。
しかし最高の道具には最適の素材として惜しむことなく採用する。そして、強度低下を避けるため、溶接ではなく削りだしでパーツを作ったり、金型を作るなど徹底的にこだわる。

コメツブの激流の中、任意の方向に完壁に竿をセ ットするために考案した丸ラックギア(PAT.)機構を搭載した「キャメックス・アルテイマGスーパー18」は、こだわりの結晶とも呼べるピトンだ。
モンキーレンチの機構にヒントを得て、ギアを回転させることで竿受け部を左右に自在に調整できるのだが、ギアの歯1枚の曲げ強度が2t、構造上2枚半で止めているので、少なくとも5tの力が掛からなければ竿受け部は回転しない。18mmの極太脚を採用しており、クチジロはもちろんクエ狙いに使用するフアンも少なくない。もちろんパーツはオール64チタンだ。
「モノ作りには終わりがないんですよ。こうすれば もっと使いやすくなるというのが必ずある」という 亀井。
近年は、チタンが瞬間的に焼き付くという性質を利用し竿受け部と脚を固定する「ノンスリップキャッチ方式」といった画期的なアイデアを採用したピトンも充実。
更なる完壁を求めて道具を作り続けている。



  怪人伝説 TOPに戻る