オウガハンドが叶えてくれた夢のロクマル尾長【高知県鵜来島】TMアンバサダーSAORI

 

ロクマルにもっとも近くて遠い島

 

グレ釣りの魅力に心を奪われし者なら、一度は釣ってみたい夢のサイズが尾長グレの60cmオーバーだ。一説によると、成長するのに20年以上の歳月がかるといわれる大きさだけに個体数が少なく、過酷な生存競争を生き抜いてきたことから、賢さと警戒心の強さはすこぶる高く、強靱なボディから繰り出すパワーは別格。喰わせるのも取り込むのも難しいターゲットだからだ。

そんなロクマルにもっとも近く、そしてもっとも遠いといわれる釣り場のひとつが、高知県鵜来島だ。マキエにつられて姿を見せるロクマル尾長の数は、おそらく日本一。しかしながら、そのスレっぷりも日本屈指で、夢破れて散った猛者の数も日本一だろう。

ここに潜む難攻不落のデカ尾長に挑み続けるレディースアングラー、釣武者アンバサダーのSAORIさんが夢を叶えたのは、2026年1月14日のことだった。

鵜来島本島と姫島の間に浮かぶ水島群礁。高く突き出す右が1番、全体的に低いまん中が2番、全体的に高い左が3番。その左の離れ磯は丸サゲ

 

ステージは水島2番の奥々

ステージは水島2番の奥々

今年2回目の尾長チャレンジとなるこの日、友達と2人で上がったのはデカ尾長の実績場である水島2番の奥々。鵜来島本島と姫島の間に浮かぶ水島群礁の中央に位置するデカ尾長の実績場だ。
「前回は2番のチョボに上がったのですが、魚の姿もほとんど見えずまったくアタリもなかったですね。今回は仲のいい女友達と一緒だったので、すごく楽しみで燃えていました」
大好きなオウガハンドSC1.5号5mに道糸、ハリス2.75号、グレバリ8号、G4のウキをセットしたものの釣り座は波が洗っており、本命の船着きのポイントに入れたのは午前8時を過ぎたころ。それでも時折頭から波しぶきをかぶる状況だった。
「波と風で魚が見えるとかそんな感じじゃなくて、波をかぶるしテンションも下がっていきました」
それでも少しずつ波が落ち、11時を過ぎるころには普通に釣りができるようになってきた。

奥々から夜明けを望む。左手前の出っ張りが奥、その向こうが2番の船着き、奥の大きな島は沖ノ島

 

12時ごろに魚が見え出し…

 

「奥々から奥に向かう流れと、奥からこちらにくる潮が合わさって沖へ出ていたんですけど、12時ごろには奥と奥々の間の潮がぶつかるところで魚が見え出しました」
サイズはともかく、とにかく1尾を釣ろうと気合を入れなおすSAORIさん。ウキ下は1ヒロ。マキエとサシエの同調と仕掛けの張りを意識して打ち返していく。しばらくしてアタリを捉えるもののラインブレイク。お気に入りのウキを流してショックを受けるが、気を取り直して仕掛けを組み直す。今度はG5のウキの下30cmほどのところに、大会でもらったアタリウキを付けた。単体の円すいウキでは取りきれない小さなアタリをとらえ、刹那の早アワセを決めるための選択だ。

2番の奥々船着きがSAORIさんの釣り座。この前にデカ尾長が見えてきた

 

決まる渾身の“鬼アワセ“…

 

「マキエを3杯撒いたんですけど、全部思ったところにきれいに撒けて、仕掛けを入れてうまく張れました。これはアタるなって思う瞬間がたまにあるんですけど、このときがまさにそんな感じで。少し仕掛けを張ってマキエとサシエを同調させて3秒くらい経ったころに、アタリウキが3cmくらい入ったんです」
渾身の“鬼アワセ”を叩き込むと、ズドンという重量感が竿に乗った。それと同時に強烈なファーストランがSAORIさんを襲う。オウガハンドの粘りとパワーを信じて応戦開始。
「尾長グレだけじゃなくてキツ(イズスミ)もいっぱい見えていたので、キツかもしれないと思ったんですけど、最初の突っ込みが止まったところで、魚が首を振ったんですよ。尾長は口に掛かると首を振ると聞いたことがあったので、いいところに掛かった尾長かな、でもいつもキツだし、なんてことを思いながらやり取りしました。でも、そのあと尾長の姿が見えて、そこからがヤバかったです」
ハンパないサイズの尾長だと分かった瞬間、それまでになかった緊張感と焦りに襲われたのだ。

 

血の気が引くやり取り…

 

「尾長ではなくキツだと自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせようとするんですけど、奥々と奥の間の海溝とか、足元のえぐれたところへ向けて何度も何度も突っ込んでいく。右へ行かせたり左へ行かせたりと魚を返してやり取りするんですけど、すっごい緊張しました。いいところ、口に掛かっているとは思いましたが、エラに巻かれたら切れるっていうのと、少しでも違和感を与えると突っ込まれるので、魚を怒らせないように、もう血の気が引くような感じのやり取りでしたね」
とんでもなく長く感じた攻防の末、ようやく海面近くに丸々と肥えた巨体が浮いてきた。
「一緒に行ってた友達は、めちゃくちゃタモ入れが上手い子なんですけど、今回も一発ですくってくれて。魚がタモに入った瞬間、2人で『やったー!』って叫んでいました」

オウガハンドSC1.5号-50でデカ尾長の締め込みに耐える。これまで様々な大物を釣ってきた竿だけに竿のポテンシャルを最大限引き出せたのだろう

 

体が震えてタモも持てない

 

極度の緊張状態から解放されて、SAORIさんはその場に崩れ落ちた。
「もう本当に全身がガクガクと震えてタモも持てないみたいな。2人で涙ぐんでしばらく動けなかったです。『写真撮るよ』とか、タモ入れしてくれた子が気を遣ってくれて私はもう頭がおかしくなって、そのまま動けなかったですね」
泊まり優先、グループ優先のルールがあって、なかなか希望の磯には上がれないこと、尾長の姿は見えても喰せることが超難しいこと、たとえ喰わせることができても掛けアワせるのも難しければ取り込むのも難しいことなど身をもって知っていたからこそ、こみ上げる感動は大きく尽きなかった。

タモ越しに見ると魚が大きさがよく分かる。すごいお腹の1尾だ

 

実寸ジャスト60cm、4.6kg!

 

気持ちが少し落ち着いたあと、船長や数人の仲間に報告したところ祝福の連絡が相次ぎ、帰りの渡船の中では携帯電話の充電が切れるかと思うくらいの反響があったそうだ。
「片島の港に戻って船上で写真を撮ってから、片島磯釣りセンターに持っていったんですけど、厚みと体高があるまん丸な魚だったので、これはもしかして58cmとか59.8cmとかじゃないかなって思ったんですよ。私、口太の記録が49.9cmで『それは50cmでいいじゃん』とかいわれるんですけど、その1mmもごまかしたくなくて、今回もそのパターンかなって思ったんですよね」
ギャラリーが見守る中、検寸台に乗せた尾長はジャスト60cm、 重量4.6kg! この海域らしいベリーグッドコンディションのSAORIさんにとって人生初となるロクマル尾長だった。
「オウガハンドSCは私のために作られた竿じゃないかと思うくらいめちゃくちゃ大好きなんですよ。軟らかくて、引っ張る竿ってシロモッチもいってたんですけど、魚についていく私のやり取りにすごく合っていて、これまでいろんな魚を獲ってきました。このオウガハンドでロクマルを獲るっていい続けてきて、夢が叶ったのがすごくうれしいです」
ロクマルという魚の重みを知っているからこそ、ロクゴやナナマルのようなさらなる高みを目指すのではなく、もう一度ロクマルを釣ってみたいと語るSAORIさん。尾長釣りの挑戦は続く。