TMフェンサー 安藤幸志郎ヒストリー

釣武者底物TMフェンサー(プロスタッフ)安藤 幸志郎の釣り人生に迫る

カニを獲ってはチヌを釣る日々

 

1972年8月、安藤幸志郎さんは宮崎県日向に生まれた。釣り好きの父に連れられ子供のころから釣りに親しみ、小学2年のころには自宅から200mほど離れた磯場でカニを捕ってはブッ込み釣りでチヌを釣っていた。

「チヌは1kgとか2kgのがくるんですけど、その引きにハマりましたね。ほかに遊ぶものがなかったので魚釣りばっかりしよったです」

沖磯に初めて渡ったのは小学4年のとき。釣り場は地元の日向細島だった。

「一投目に40cmのグレを釣ったんですよ。引きが強くてですよ、もう竿をのされて、必死になってなんとか獲れて感動しました。そのあとも魚を掛けたけど全然獲れない。チヌとは全然引きが違う。それからグレにハマりました」

高校を出たあとは佐賀県に移り金型工場で働きながら、土日の休みは釣りに明け暮れた。

「釣りのテスターになりたくて、ブラックバスやライギョもやったしヘラブナにもハマりました。でも一番はやっぱりグレ釣りでしたね」

長崎県の平戸や宮ノ浦、上五島や中五島、さらには男女群島にも通うようになる。

グレ釣りにのめり込んでいた21、22歳のころ。手にするのは中五島で仕留めたグレ

 

「23歳のころですね。上五島の白瀬灯台に初めて上げてもらって尾長グレの62cmを釣ったんですよ。四畳半っていうポイントなんですけど、磯際にでっかい尾長がめちゃくちゃおって。タナは矢引きぐらい。仕掛けを入れた瞬間にひったくられて、いきなりのされて、もう切られるのかなって感じでしたけど、なんとか獲れました」

新調したばかりの1.75号ロッドに、発売間もない道糸・トルネード松田スペシャル、当時憧れていた高橋哲也さんの天狗ウキを使った仕掛けで手にした夢のサイズに思わず雄叫びを上げた。

「それまで五島で40cm台を釣ったことはあったけど、50cmオーバーはなかったし、当時は60cmオーバーが当たり前のように釣れていた男女群島でも50cmちょっとまでしか釣ったことがなかったので、62cmはめちゃくちゃうれしかったですね」

この1尾は安藤さんをさらに釣りに狂わせた。家庭を顧みず、ますます釣りにのめり込んでいったのだった。

 

イシダイ5尾にどハマリ

 

「30歳過ぎにですね、あんまりかっこよくはないんですけど、いろいろあって1人になったんですよ。地元に戻って、魚釣り自体もやめて。それで1年ぐらいしたころに、そろそろ何かやろうかなって、地元の釣具店に行ったんですよ。そしたら、店長さんがイシダイ釣りが好きで『イシダイ釣りを始めてみませんか』って声をかけてもらって、道具一式をそろえたんです」

釣りの虫がうずき始めた安藤さんは、いてもたってもいられなくなった。いきなり一人でイシダイ釣りに向かったのだ。

「忘れもしない11月3日。土々呂の千広丸って渡船なんですけど、初めてのイシダイ釣りで本石を5尾釣ったんですよ。そのときはまだ手持ち(竿)とか知らなかったので置き竿やったですが、竿の舞い込みシーンもすごいし、アワせた瞬間の強い引きも最高でした」

独学のためアワセのタイミングが分からず、ずいぶんスッポ抜けもあったそうだが、安藤さんはイシダイ釣りの魅力にノックアウトされてしまった。休日は磯通いの日々に戻ったことはいうまでもない。

イシダイ釣りを始めたころに足繁く通った土々呂での釣果。当時から釣武者のファンだった

 

 

手持ち竿の有効性を知る

 

42kgのクエをはじめ、イシダイやグレでも数々の大物を仕留めている父親に、ザイロンを使うハリスなど仕掛けを教えてもらうことはあったものの、基本的にイシダイ釣りは独学を通した安藤さん。試行錯誤を繰り返して考え抜いた末に答えを出すのが楽しくて、それにこだわった。

日向細島や門川、延岡の北浦そして大分県南部の深島やなどにも脚をのばし釣果アップを目指すなかで、手持ち竿の優位性にも気づく。

「乗っ込みの魚は産卵前でナーバスじゃないですか。昨日はめちゃくちゃ食い気があったけど、今日はまったく食い気がないとか。そういうときは手持ちの方が送ったり誘ったり駆け引きで食わせられるんだなと。それで手にした1尾は釣れたじゃなくて釣った感が強かったですね。完全に食わせて走らせる、確信を持って合わせられるようになるまで2、3年かかりました」

それと前後して、穂先のテンションを抜くことでイシダイに違和感なく食い込ませる「テンションゼロ」に目覚めるのだが、それはまた別の機会に紹介したい。

初めての武者泊でイシダイを激釣

 

ウツボ23尾のあとにクエ

 

イシダイ釣りにのめり込み、1年を通してイシダイ一筋だった安藤さんだが、10年前からクエ釣りもスタート。夏の昼間の暑さ対策でと考えていたが、人生初のクエ釣りは1月4日の日向細島。そしていきなりクエを仕留めたのだ。

「大バエという磯なんですけど、冷凍サンマ10kgをエサに持っていってですよ、釣り始めたらウツボの入れ食い。何尾釣れるかなってずっと数えていたら23尾釣ったところでピタッとウツボのアタリが止まって、そのあとすぐに10kgぐらいのクエがきました」

グレといい62cmの尾長といいイシダイといい、“初めて”の強さをまたまた発揮した安藤さん。数年後の夏にはクエ釣りで忘れることのできない出来事も起こった。

「8月15日に夜釣りで大バエに上がったのですが、すぐにクエを1尾釣って、夕方の6時ごろにゆっくり竿が入っていって磯にへばりついたんですよ。竿がミシミシいいだして、竿のところまでいったんですけど、怖くてよう触らんかったらバーンって竿が跳ね上がった。100号の道糸が切れたのかなと思ったら28番のワイヤーがバラバラになっていました」

そんなモンスターが潜むのも磯釣りの魅力なのだという。2024年12月8日には自己記録の121cm、27kgを仕留め、その後の釣行でも立て続けに10kgクラスのクエを手にしており、行きつけの寿司屋に持ち込んでは仲間とのクエパーティーを大いに楽しんだ。

2024年12月8日に日向細島で仕留めた121cm、27kgのクエ

 

忘れられない古和浦

 

さて、基本的にホームグラウンドをじっくり釣るのが好きな安藤さんだが、近年はイシダイ狙いの遠征にも力を入れる。愛媛県武者泊では数釣りを楽しみ、三重県古和浦では真夏にデカバンを仕留めた。

「2023年の三重県古和浦は忘れられないですね。7月下旬の猛暑のなか、62cmを頭にいい型ばかり4尾。あんなに釣れるとは思っていなかったので正直びっくりしました。地元ではガンガゼ(ウニ)を使うと9割ぐらいはメスなんですけど、大きなオスが釣れたのも驚きでしたね」


2023年7月下旬、初挑戦の三重県古和浦で激釣。これは62cmとのファイトシーン

古和浦で仕留めた62cmに頬が緩む安藤さん。この日は合計4尾のイシダイを手にした

2025年は、男女群島に勝るとも劣らぬ釣果が期待できる下五島・黄島の美漁島釣行を予定。また、日本屈指のデカバンエリア、高知県西南部の柏島・ムロバエ群礁のアンパンや、沖ノ島のヒトツバエ、鵜来島の水島三番西ノハナなどへもぜひ挑戦したいと意欲的だ。

安藤さんのさらなる活躍に期待したい。