TsuriMusha若手エキスパート 政斗の情熱

TsuriMushaに活きのいい若手がいる。
今回は世代を代表するエキスパートとして各メディアでも活躍中の政斗に迫りたい。

YouTube釣武者チャンネルや釣り雑誌でも活躍中の政斗

 

格闘技に夢中だった子供時代

 

一説によると和歌山県は、人口100人あたりの釣り人口比率が10.45人で全国トップクラス。そんな釣り大国の中でも、中学生が釣り具メーカーのエナメルバッグで通学するとの噂がある田辺市は、とりわけ釣りが盛んなエリアだ。
 この街に生まれ育った釣武者、若手エキスパート政斗だから、幼少期から釣りにぞっこんなのかと思いきや、まったくそうではない。
「子供のころは空手。15、16歳でキックボクシングを始めて、とにかく格闘技に夢中でした」

キックボクシングでは現役を退いたあと指導員として若手の育成にも力を入れる(左)

 

アオリイカのヤエン釣りにハマる

 

釣りを始めたのは、17、18歳のころ、今の奥さんの姉の旦那さんに誘われて行ったアオリイカのヤエン釣りが最初だ。これは、生きたアジを泳がせてアオリイカに抱かせたら、だましだまし手前まで寄せてから、ヤエンをラインに通して滑らせ掛けるというスリリングな釣り。
「アオリイカがアジを抱いても、手前まで寄せる間に放されたりしてなかなか釣れない。ハラハラドキドキのやり取りが面白くてハマりました」

アジを抱いたイカを寄せるスリリングなやり取りが病みつきになった

 

Bが2個で2Bだと思い込み…

 

釣りの魅力を友達に伝え、皆でワイワイとヤエン釣り楽しむうちにフカセ釣りもやることになった。しかし、なかなか釣れなかった。
「あるとき2Bのウキを使って釣っていたんですけど、毎回ウキは沈むのに何も掛からない。僕があまりにもアワせるもんやから、隣の釣り人が『何のウキを使ってるの?』って声をかけてきたんですよ。ウキは2Bですよって答えたら『それだけアタって掛からんか』って不思議がられて。当時はBが2個で2Bだと思っていたので、Bのガン玉2個付けてるっていったら『そんなやつおるんかよ』って呆れられて。それくらい何も知らなかったですね」

 

ゼロスルルを学び鼻高々

 

ゼロスルスルで面白いようにグレは釣れてその虜になっていく

仲間より一歩先んじようと政斗は、フカセ釣りをしている父に教えを乞うた。
「その頃父はゼロスルスルの釣りをしていたんですよ。ゼロのウキを通して道糸とハリスを直結してからハリをくくっといたら釣れるわみたいな感じで教えてくれて、友達と波止に行ってやってみたら釣れたんですよ、僕だけグレが。友達は釣れなかったので鼻高々だったのを覚えてます。やったったみたいな(笑)」
 その後、父に連れられて初めて沖磯へ。渡ったのはすさみのカツオ島だ。
「渡船で渡ればボコボコに釣れると思っていたのにショボかった(笑)。でも沖磯に渡る醍醐味というか、それだけで気持ちがよかったですね」
そこから本格的にグレ釣りにのめり込み、次第に釣果も伸びていった。

初めて渡った沖磯はすさみのカツオ島。釣果は厳しかったが沖磯は気持ちよかった

 

半遊動に目覚めた25歳

 


松田稔さんに憧れて半遊動に挑戦。

オモリを使ってウキ下を決める釣りは想像をはるかに超えて難しかった。

「全遊動の釣りでそこそこ釣れるようになって、俺も上手いやんって天狗になりました。ただ、1年目は釣れてうれしかったのが、2年目には少し疑問を持ち始めて、3年目になるとなんで釣れるのか分からなくなってきて。いろいろなメディアを通して松田(稔)さんの釣りを見て、半遊動に目覚めたのが25歳のころですね」
 タナを設定せず軽い仕掛けを入れ込んでいく全遊動の釣りに対し、ウキ下をきっちり決めてタナを釣る半遊動の釣りは手強かった。
「やってみるとまったく釣れないんですよ。なぜ釣れないのかが分からない。松田さんに憧れていたし半遊動の釣りを覚えたくて、名釣会に入ることにしたんです」

 

シロモッチと運命の出会い

 

本来であれば和歌山支部になるところが、名釣会の知り合いのつてで入ったのは阪南支部。それが政斗の運命を変えた。そこにはフィッシングチーム・テイストのメンバーがいて、シロモッチとの出会いがあったからだ。
「城本さんって最初はとんでもなくエサを持ってくる異質の人やなって印象やったんですけど、めちゃくちゃ釣ってくるんですよ。並んで竿を出すこともあったんですが、ボコボコにされる。でも僕もプライドがあるから聞けないんですよ。そしたら『お前は何も聞きにこんな』っていわれて。それで頭を下げて聞きにいったら『釣りのことを知りたかったら飲みに行こう』って誘われて。そこでいろいろ教えてもらいました」

直結部分の締め込みひとつにも理論があり、正しく締め込まないと強度が落ちることもシロモッチに学んだことのひとつ

フカセ釣りはマキエが命。その意味を深く理解することで政斗の釣りは大きく進化した

 マキエの撒き方、仕掛けの入れ方など、分かったつもりだった釣りの動作ひとつひとつにもっと深い意味や大きな理由があり、いろいろなやり方があることを知った。
「僕が仕掛けを作っていると、城本さんは後ろに立ってじっと見ているんですよ。『その結びだったら、よくウキを流すだろう』って。確かに当時はしょっちゅう直結部が切れてウキを流していました。道糸とハリスは松田結びなんですけど、糸がねじれずきれいに平行を保ったまま締め込むことで強度が出るんだと。城本さんにそれを教えてもらってから切れなくなりましたね」
 それに前後してテイストにも加入した政斗は、シロモッチにいろいろなことを教わり、攻略の引き出しを増やし続けていく。それはいまも継続中だ。

 

達成感と高い再現性

 

テンポよく連打に持ち込めるのが半遊動の強みのひとつ

「半遊動の釣りは、自分の中で計算して喰わせたと実感できるのが一番の魅力ですね。ウキ下3ヒロならそこで喰わせる計算がある。それはグレが喰いにくるタイミング、エサを合わせるタイミング、そういうことを計算して喰わせた1尾なんですよ。潮が変わらなければ、その釣りを続けてまた喰わせられますよね」
頭の中で思い描いたイメージ通りに喰わせたという達成感があり、再現性が高いのが半遊動の魅力だと政斗はいう。逆にいえば、イメージしていないのに引ったくっていくような“まぐれ”もよく分かる。そんなときは、なぜそこで喰ってきたのかを考えることで、異なるアプローチのヒントにもなるのだ。
「自然が相手なので毎回違うのもあるし、技術の差が出ますよね。人より釣れたらうれいし、釣れなかったら悔しくてムキになるっていうか、もっとうまくなりたいと思う」
 幼いころから格闘技で鍛えられた負けず嫌いのスピリットと向上心が、政斗のグレ釣りの根幹であり原動力だ。

計算通りに喰わせた1尾だからこそ喜びは大きい

ホームの和歌山では見ることのない急潮に戸惑いながらもヒットに導く

 
 和歌山県をホームに近年は少しずつ県外にも足を運ぶ。いま、もっとも気になる釣り場のひとつが四国西南部。愛媛県中泊や武者泊の急潮釣り場だ。
「和歌山の海にはない潮の流れと、でっかい魚ですよね。和歌山だとラインは1.5号や1.75号がメインで2号以上を使うことはまずないんですけど、2.75号とかにすると仕掛けのなじみや操作感が、こんなに違うのかって思うくらい全然変わってくるんです」
 そうしたことに戸惑いながらも慣れるに従いヒットに持ち込めるのは、和歌山で培った半遊動スタイルのベースがしっかりしているからだろう。
「数少ない経験ですけど、潮のヨレに仕掛けが入れば素直に喰ってくる印象がありますね。入らなければ喰わない。はっきりしている。だからマキエの撒き方もそうだし仕掛けの入れ方や、なじませ方などいろいろ試しています。ただ、大きい魚は今の自分の実力では獲れないというのが素直な気持ちです」
 そこはやはり経験値。数多く大型を掛けることによって体で覚えていくしかない。自分の弱みを知ることで、それを克服してネクストステージへ進む。政斗の活躍に期待したい。

大型グレを目指して政斗の挑戦は続く